「使う人」か「使われる人」か—AI時代に生き残るビジネスリーダーの条件
「最近の若手は、ChatGPTをサクッと使って提案書作ってきますよ。で、僕らのほうが“これ、どうやって作ったの?”って聞いてるんです」

これは、ある日系メーカーの人事部長の言葉です。彼のチームでは、30代の営業職がChatGPTを活用し、提案資料のたたき台を1時間で完成。見栄えも良く、議論の起点として非常に優れていたそうです。
一方で、別の課長クラスの社員は、「まずはワードで一文字ずつ自分で打たないと納得できない」と言いながら徹夜で資料を作成。でも結局、社内会議ではほとんど使われなかった——。
AIに“使われる人”と“使いこなす人”の差が、現場でじわじわと広がっています。
◆状況:ChatGPTだけじゃない、「知らないこと」が差になる時代
私はこれまでAIに関する書籍を2冊出版し、企業の人材戦略の現場でも数多くの管理職やシニア層と対話してきました。
最近、明確に感じるのは、「知ってるかどうか」がキャリアに直結するフェーズに入っている、ということです。
かつては「AIとか若い人がやることでしょ」というスタンスでも成立しました。でも今は、「ちょっと使えるかどうか」で転職市場や社内評価に大きな差がついてきます。
◆課題:マネジメント層こそ、AI活用の視点を持てるか?
企業が求めているのは、「AIそのものが使える人材」ではありません。
AIを「どう使えば業務が改善するか」を考えられる人材です。
たとえば、ある40代後半の経営企画職の方。中堅メーカーで働いていましたが、「会議の議事録が毎回3時間もかかって非効率」と悩んでいたところ、ChatGPTに音声データを入れて要点整理を試みたそうです。
結果、議事録作成が30分に短縮され、上司にも共有しやすくなったことで、次の経営戦略会議の進行役の機会を得ました。
「AIを“部下”として扱う感覚ですね」と語っていたのが大変印象的でした。
◆選択肢:「使われる側」に回るのは簡単です
AIを使わないのは、もはや「選択肢」ではなく「リスク」です。
「怖くて手が出ない」
「やってみたけどよくわからない」
「若い人がやってくれるからいいや」
こうした姿勢がにじみ出ると、“古い人材”と見なされてしまう現実があります。転職市場でも、業界、」職種によって「AIとの相性が悪そうな人」として評価を下げられるケースが出て来るでしょう。
◆解決策:「AI×あなたの強み」が新たな市場価値になる
キャリアは「何ができるか」より、「何を武器にできるか」で決まります。
・ベテランの営業職がChatGPTを活用して商談の事前情報を整備
・管理職が、部下が作ったAI生成の資料を的確にチェック&仕上げる力を持つ
・人事がAIを使って求人票のペルソナ設計やスカウト文面を自動生成
AI×マネジメント、AI×営業、AI×採用といった掛け算が、今後の転職市場や評価の「軸」になっていくのです。
◆提言:まず始めるべき3つのアクション
・ChatGPTを実際に開いて、自分の業務に役立てる質問を一つ投げてみる
・チームの中で「AIで何ができたか」を話し合う5分を作る
・転職時の面接で「AIをどう使っていますか?」と聞かれる想定で、自分の答えを準備しておく
◆最後に:AIを「怖い」と思うのは、あなただけじゃない
むしろ、「やってみたけどイマイチだった」人のほうが多数派です。でも、そこで止まらず、試行錯誤できる人が、これからのリーダーに相応しいのでしょう。
AI時代において本当に問われているのは、「スキル」ではなく「姿勢」です。
“使う側”に立つか、“使われる側”で終わるか——今我々はその分かれ道に立っているのだと思います。