オランダでスカウトされた話—「なぜ私が?」と驚いた瞬間

オランダでスカウトされた話—「なぜ私が?」と驚いた瞬間

SNSなど存在しなかった時代のお話です。

オランダでの駐在生活もそろそろ終盤。「帰国したら何をしようかな」と考え始めていたころ、オフィスの電話が鳴りました。

「Hello, may I speak to Mr. Nakanishi?」

ん? どこかの取引先だろうか? それとも、新しい顧客からの問い合わせ?

しかし、話を聞いてみると、相手は外資系のヘッドハンター。明らかに英語ネイティブの外国人です。日本から掛けてきてるようでした。

「貴方の経験について、ぜひお話を伺いたくて」

なんだか大げさな響きに、思わず「え、なんで私?」と首をかしげました。

英語の電話に、ちょっと焦る

突然の英語でのスカウト。いや、普段から英語で仕事をしているとはいえ、こういう“面接みたいな”やり取りには少し緊張します。

「Would you have a few minutes to talk?」

と聞かれたものの、いきなり英語で自分のキャリアを語るのもハードルが高い。でも、なんとか対応しました。

思えば、この電話そのものが英語での対応力チェックだったのかもしれません。今思い返すと、妙にゆっくり話してくれた気がします(💦)。

彼らはどこで「私」を見つけたのか?

「どうして私のことを?」と聞くと、ヘッドハンターはこう言いました。

「We heard about you from industry professionals. Your name came up in conversations.」

要するに、業界内のネットワークを通じて、私の存在を知ったということでした。
海外駐在員の情報は、業界誌や展示会、取引先との会話の中で自然と流れるもの。
「この人、オランダで頑張っているらしいよ」そんな話が、どこかで広がっていたのかもしれません。

なんというか、自分では気づかないうちに“市場に出ていた”感覚です。

どんな評価ポイントで声がかかったのか?

「なぜ私に?」と尋ねると、ヘッドハンターはこんなポイントを挙げました。

欧州でのビジネス経験があること(特に、ローカル企業との交渉・契約経験)
「日本企業の考え方」と「欧州の市場感覚」の両方を理解していること
市場開拓やビジネス拡大に直接関わっていること
英語での交渉・マネジメント経験があること

特に、「日系企業のやり方だけでは通用しない環境で、どう適応してきたのか」が評価ポイントだったようです。

「You understand both worlds, and that’s valuable.」

と言われ、ちょっと照れくさくなりました。

採用企業のオーダーが透けて見えた質問

会話を続けるうちに、ヘッドハンターの質問の意図が見えてきました。

「What are the key challenges for Japanese companies in Europe?」
(日本企業が欧州で直面する最大の課題は何だと思いますか?)

「How do decision-making processes differ between Japan and Europe?」
(日本と欧州では、意思決定のプロセスがどう違いますか?)

「Have you led a team of local employees?」
(現地スタッフをマネジメントした経験はありますか?)

これはつまり、企業側が求めるのは、単に海外で働いた経験ではなく、「実際に成果を出せる人材」だということ。
日本本社のやり方をそのまま持ち込むだけの駐在員ではなく、現地に合わせて柔軟に動ける人が求められていたのです。

「帰国後にまた話しましょう」と言われて…

結局、その場では深い話にはならず、「帰国したらぜひ会いましょう」と言われました。
「I will reach out when you're back in Japan.」

そして、帰国してしばらくすると、また連絡が。

「Now that you are back, let’s meet and discuss some opportunities.」

こうして、私は「転職市場にいる」つもりはなかったのに、気づけば市場価値を評価される立場にいたのだと思います。

スカウトは「待っている人」ではなく、「すでに動いている人」に来るもの。
気づかぬうちに市場価値を高める仕事をしていることもあるのです。

「なぜ私が?」の答えは、「ただ海外にいたから」ではなく、「海外でどう動いていたか」ではないかと、思いました。

次回は、「35歳転職限界説」は本当か?年齢と市場価値のリアル をお届けします!